みなさんは、芥川賞と直木賞について、どのくらいご存知でしょうか?
名前だけはともかく、その仕組みについては、よく分からないという方も、少なくないのではないかと思います。
そこで、この記事では、芥川賞と直木賞の仕組みを解剖していきたいと思います。
芥川賞と直木賞の掲載雑誌はどれなのか、出版社別の受賞数や、その割合はどれくらいなのか。
そして芥川賞と直木賞の受賞作の版元として、文藝春秋が圧倒的に多い理由とは…?
早速見ていきましょう。
芥川賞と直木賞の掲載雑誌
第164回(2020年下半期)芥川賞・直木賞は、少しいつもと事情が異なっていたのでした。
候補作家・作品を見てみるとすぐ分かります。
芥川賞は、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』、尾崎世界観さんの『母影』、木崎みつ子さんの『コンジュジ』、砂川文次さんの『小隊』、乗代雄介さんの『旅する練習』。
直木賞は、芦沢央さんの『汚れた手をそこで拭かない』、伊与原新さんの『八月の銀の雪』、加藤シゲアキさんの『オルタネート』、西條奈加さんの『心淋し川』、坂上泉さんの『インビジブル』、長浦京(ながうらきょう)さんの『アンダードッグス』。
芥川賞には尾崎世界観さん、直木賞には加藤シゲアキさんと、それぞれ著名人がノミネートされていたからです。
ということでこのときの芥川賞・直木賞は、いつもより発表前の雰囲気が熱くなった感がありました。
それでは、そんな芥川賞と直木賞の掲載雑誌とは、それぞれ、どこだったのでしょうか?
芥川賞の掲載雑誌は『文藝春秋』、直木賞の掲載雑誌は『オール讀物』だったのでした。
芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学を対象にした文学賞。
芥川賞の歴代受賞者は、大江健三郎さん、石原慎太郎さん、村上龍さん、など。
直木賞の歴代受賞者は、渡辺淳一さん、林真理子さん、浅田次郎さん、などとなっていますから、納得でしょう。
もっとも、社会派のミステリー作家として著名な松本清張さんが直木賞ではなく、芥川賞を受賞しているなど、若干の例外もあります。
一方、『文藝春秋』はオピニオン誌なのに対し、『オール讀物』は文学誌という違いがあります。
いずれの雑誌にせよ、それぞれのジャンルでは代表的な権威のあるものとなっていますので、芥川賞と直木賞の掲載雑誌としては、違和感を持たれることは少ないのではないでしょうか。
芥川賞と直木賞の出版社別受賞数
文学賞といえば、通常は、受賞作や受賞者に目が行くものではないでしょうか。
しかし、芥川賞と直木賞のようなメジャーな文学賞とくれば、出版社別の受賞数も気になるところです。
そこでさっそく、こちらがどうなっているのか、調べてみました。
まず、芥川賞受賞作の出版社は、首位は、『文學界』の文藝春秋で、受賞数は19回。
次点は、『新潮』の新潮社で、受賞数は11回。
3位は、『群像』の講談社で、受賞数は9回。
4位は、『文藝』の河出書房新社で、受賞数は5回。
5位は、『すばる』の集英社で、受賞数は3回。
そして6位は、『小説トリッパー』の朝日新聞出版で、受賞数は1回となっていました。
一方、直木賞受賞作の出版社は、首位は、文藝春秋で、受賞数は24回。
次点は、講談社と新潮社で、受賞数は5回。
3位は、集英社で、受賞数は4回。
4位は、幻冬舎で、受賞数は3回。
5位は、祥伝社と小学館で、受賞数は2回。
そして6位は、KADOKAWA、角川書店、マガジンハウス、岩波書店、日本経済新聞出版社、PHP研究所で、受賞数は1回となっていました。
芥川賞と直木賞の出版社別受賞の割合
続いては、上記の結果を割合で見ていくことにしましょう。
芥川賞受賞作の出版社は、文藝春秋が40%。
新潮社が23%。
講談社が19%。
河出書房新社が10%。
集英社が6%。
朝日新聞出版が2%となっていました。
直木賞受賞作の出版社は、文藝春秋が55%。
講談社と新潮社が11%。
集英社が9%。
幻冬舎が7%。
祥伝社と小学館が5%。
KADOKAWA、角川書店、マガジンハウス、岩波書店、日本経済新聞出版社、PHP研究所が2%となっていました。
芥川賞と直木賞の受賞で文藝春秋が圧倒的に多い理由
このように、芥川賞と直木賞の受賞においては、文藝春秋が版元の作品が圧倒的に多くなっていました。
その理由は何だったのでしょうか。
先述のとおり、芥川賞の掲載雑誌は『文藝春秋』、直木賞の掲載雑誌は『オール讀物』。
が、これらは文藝春秋が版元です。
そして芥川賞と直木賞自体、文藝春秋の文学賞なのでした。
もちろん、選考は公平になされているのでしょうが、これではどうしても、文藝春秋有利になってもおかしくはないでしょうね。
芥川賞も直木賞も、それぞれ、日本一有名な文学賞ですが、このような舞台裏があったとは、おもしろいものですね。
版元によって受賞数に差があったのも、かなり想像外でした。
それでは、次回の芥川賞、直木賞の受賞結果を注意深く見ていきましょう。